コーヒー豆:産地編
「エルサルバドル」

コーヒーの生産には、土地の気候や風土、そして歴史が深く結びついています。生産国ごとの特徴を読み解くことで「その土地ならではのコーヒー」が見えてきます。

今回のdeepressoでは、中央アメリカ中部に位置する国「エルサルバドル(El Salvador)」についてご紹介します。

目次
エルサルバドルについて
コーヒーの特徴
コーヒーの精選方法
コーヒーの歴史
コーヒーの格付け
パカマラ種を産んだ地

 

エルサルバドルについて

エルサルバドルの国土面積は21,040㎢と、日本の四国(18,803㎢)よりやや大きい程度です。これは中央アメリカでもっとも小さい国であり、人口密度は中央アメリカで一番高い国となっています。グアテマラとホンジュラスに国境を接しており、南は太平洋に面しているため、中央アメリカで唯一カリブ海と接していない国でもあります。

国名の正式名称は「エルサルバドル共和国」で、公用語でもあるスペイン語で「救世主」を意味します。
スペイン軍が侵攻した際、この地を”Provincia De Nuestro Señor Jesucristo El Salvador Del Mundo”(=この世の救世主である主イエス・キリストの領土)と命名したのがきっかけと言われています。それが歴史の中で短縮され地名となり、国名となったとされています。漢字では「救世主国」とも表記するので、おもしろいですね!

また、2021年9月7日に暗号資産(仮想通貨)のビットコインを法定通貨としたことで、注目された国でもあります。

コーヒーの特徴

火山灰によるミネラル豊富な土壌、温寒差のある気候、十分な雨量など…コーヒーの栽培に最適な環境が揃っています。

国土の3分の1を占める南西部の山岳地域には20以上の活火山があり、国土のほとんどが高地であること。雨季と乾季にはっきりと分かれる熱帯気候で、5月~10月の雨季には、まとまった激しい雨が降りることが関係しています。年間で1,700〜2,000mmほどある降雨量のほとんどが、雨季に集中しています。

また、国立コーヒー研究所ISIC(アイ・エス・アイ・シー:Instituto Salvadoreño de Investigaciones del Café)を有しており、希少となりつつあるブルボン種の栽培管理や、品質改善や耐病性、生産効率の向上などに向けた品種改良などが行われています。ISICを中心に、コーヒーの栽培を国家プロジェクトとして取り組んでいます。

コーヒーの栽培環境・育成条件が整っていることや、国を挙げてコーヒーの生産に力を入れていることにより、クオリティーの高いコーヒーがつくられています。一般的にですが、エルサルバドルのコーヒーは、スッキリとした酸味、爽やかな後味でマイルドな味わいが特徴とされています。

  

コーヒーの精選方法

収穫した赤いコーヒーチェリー(コーヒーの実)が、コーヒーの生豆になるまでの工程を精選と言います。エルサルバドルでは「ウォッシュド(水洗式)」が主に取り入れられています。

ウォッシュドの工程として、収穫したコーヒーチェリーを選別した後、「果肉除去」→「ミューシレージ除去」→「水洗」→「乾燥」という順番で行われます。「ナチュラル(非水洗式)」と比べると乾燥時間も短く、クリーンな味わいになるのが特徴です。

ウォッシュド(水洗式)の精選過程。水を使いミューシレージを除去します。
アフリカンベッドと呼ばれる乾燥棚を使い、乾燥されるコーヒー。棚部分は網になっていて、下からも風が通るようになっています。

 

コーヒーの歴史

コーヒーの栽培が始まったのは1840年代と言われており、それ以前の主な商品作物はジーンズなどに使われている染料のインディゴでした。しかし、時代の流れとともに合成染料が普及し、インディゴの需要が減少。代わりに、当時需要が増えていたコーヒーへと移行され、コーヒーの栽培・生産が増えていったそうです。

コーヒーの生産は内戦による衰退の時期を経て、その後品質に重点を置くことでゆっくりと回復。現在では経済の中心が農業のエルサルバドルで、コーヒーが主要な輸出品となっています。ちなみに、エルサルバドルの国花は「コーヒーノキ」が選ばれています。それだけエルサルバドルにとって、重要な商品作物といえると思います。

 

コーヒーの格付け

コーヒーは現在、生産国ごとに等級(グレード)と言われる格付けが行われています。

格付け方法の指標は、大きく分けると3つあります。

・栽培地の標高
・スクリーンサイズ(豆の大きさ)
・欠点数

世界で統一された国際基準はなく、先ほどあげた指標をもとに生産国ごとに異なった格付け方法で行われています。

エルサルバドルでは「栽培地の標高」をもとに格付けが行われており、標高が高いほど良いグレードとされています。

高品質なコーヒーは、昼夜の寒暖差が大きい高地で栽培される傾向が多く、それが格付け方法の一つである「栽培地の標高」に反映されています。ちなみに、メキシコ・グアテマラ・ホンジュラスなど…中央アメリカの国で多く採用されている指標です。

おおよその標高グレード
1,200m以上SHG(Strictly High Grown ストリクトリー・ハイ・グロウン)
900〜1,200mHG(High Grown ハイ・グロウン)
900m以下CS(Central Standard セントラル・スタンダード)

 

パカマラ種を産んだ土地

コーヒーは「アラビカ種」と「カネフォラ種」という2つの品種に大きく分かれています。そこから突然変異や品種同士の交配によって、今では200以上の品種があると言われています。

比較的新しいコーヒー品種である「パカマラ(Pacamara )種」は、エルサルバドルの国立コーヒー研究所(ISIC)が世に出した、アラビカ種に属する改良品種です。

ブルボン種が突然変異して生まれた「パカス(Pacas)種」と、丈夫で果実が大きいのが特徴とされる「マラゴジッペ(Maragogype)種」を掛け合わせたものです。この2つの名前から、「パカ/マラ」と名付けられました。

「パカス種」からは風味の秀でた点、収穫量が良い点、樹木が成長しても比較的低木で収穫作業効率の良さなどの長所が引き継がれ、「マラゴジッペ種」からは果実が大きい点、風味の質の良さが引き継がれました。

パカマラ種はエルサルバドルのスペシャルティコーヒーを牽引しており、エルサルバドルを代表する品種と言っても過言ではありません。

最後に

今回のdeepressoでは中央アメリカ中部に位置する国「エルサルバドル」についてご紹介しました。コーヒー生産国のメジャーブランドでもあるブラジルや、エチオピアなどと比べると、まだまだ馴染みがないかもしれませんが、高品質なコーヒーを生み出すエルサルバドル。ぜひ一度は試していただきたいコーヒーの一つです。

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