COEについて
生産者との繋がり
コーヒーを選ぶ際に「COE」という表記を目にすることはありませんか?
COE(シー・オー・イー)とは、「Cup Of Excellence:カップ・オブ・エクセレンス」の略称で年に1度、コーヒーの生産国で行われるコーヒーの国際品評会です。
COEとは
それぞれの生産国で「その年に収穫された、最高のコーヒーを決めるコンテスト」です。
COEを開催する国は、コーヒー大国ブラジルから始まり、南米コロンビアやペルー、またグアテマラ・コスタリカなど中米諸国、そしてエチオピア、ルワンダなどのアフリカの生産国でも開催されています。今期(2021年)初めて南米のエクアドル、またインドネシアでも初めて開催(アジア初開催!)され、1月27日にインターネットオークションが開催される予定です。
COEに参加するためにはまず、国内審査員による審査を勝ち抜く必要があります。そうして選ばれたコーヒーのみが、世界各国から集まった国際審査員により審査が行われます。カッピング審査で100点満点中87点以上を獲得したコーヒーのトップ30が受賞となり、点数に基づき順位が決められます。
COE受賞ロットはインターネットオークションなどにかけられ、高値で取引されます。その落札金額のほとんどは、生産者に直接還元される仕組みになっています。
COEの目的
カップ・オブ・エクセレンスを開催する目的として、以下のことをあげています。
・COEの競争プロセスによりコーヒーの品質向上
・経済的な報酬、長期的なビジネス関係の構築
・質の高い社会・経済基盤の強化
・スペシャルティコーヒー経済に長期的な持続可能性
・トレーニングと教育
など・・・
農園の規模や財政状況に関係なく、誰でも自由に参加することができます。全ての生産者に平等なこの評価制度により、高品質なコーヒーを生産することへの動機付けからモチベーションのアップ、さらには雇用の改善にも繋がっています。
生産者との繋がり
2022年1月、大和屋からエルサルバドル エルトパシオ農園のコーヒーを販売することになりましたが、そのきっかけもCOEでした。
エルトパシオ農園との繋がりは、2009年エルサルバドルで行われたCOEでのこと。エルトパシオ農園が見事優勝に輝き、そのロットを大和屋が落札したことがきっかけとなっています。さらにはその翌年、現在大和屋の代表取締役である平湯聡(ヒラユサトシ 以下:平湯社長)がCOEの国際審査員としてエルサルバドルに行った際に、エルトパシオ農園のオーナーであるレオポルド氏を訪ねたことで、関係がより深まりました。
COEを通して偶然が重なり、今でもこうして現地の農園主と関係が続いていることに、COEが存在する意義とその偉大さを感じます。
10年以上前の話となりますが、平湯社長に国際審査員としてCOEに参加した際のお話を伺いました。以下、平湯社長へ行ったインタビューです。
2010年 エルサルバドル COEに参加して
―COE 審査員にはどういった経緯で選ばれますか?
国際審査員に応募するためには、ACEに登録していること、また「オブザーバー」としての経験が必要になります。オブザーバーとは、国際審査員と一緒に審査に参加し、同じように評価も行います。実際の採点には反映されませんが、国際審査員とどれくらい評価が同じか、または違うのか審査されます。カッピングのスキルが国際審査員にとして相応しいか、その技量が試されます。
自分はエルサルバドルで開催されるCOEの2年前、ボリビアで開催されていたCOEにオブザーバーとして参加していました。その後、お世話になっていた先輩からのお誘いもあり、エルサルバドルで行われるCOEに申し込んでみたところ、国際審査員として受理されたので、現地へ派遣されることとなりました。アメリカ、イギリス、ドイツ、ノルウェー、ロシア、オーストラリア、世界中から24名の国際審査員が集まりました。自分以外にも日本からの参加もありました。
―審査の日程について教えて下さい。
当時は4日間に分けて行われました。
1日目はカリブレーションという評価基準のすり合わせ、2、3日目に実際に審査を行い、4日目の昼間に上位に残ったものと、各審査員による評価の差が大きかったものも含め、最終審査を行います。そして夜には表彰式という、結構タイトなスケジュールでした。
自分はCOEを終えた後、農園の視察へも行ったので全部で6泊くらいしました。その時に、エルトパシオ農園に行き、レオポルド氏にお会いしました。
現在はコロナウイルスの影響もあり、COEはオンラインを活用しおこなっている国もあるようです。
―先ほどお話にでてきた「カリブレーション」について、もう少し詳しくお伺いしてもいいですか?
審査員は各国から集まり、国も違えば文化(特に食文化)も違うため「このコーヒーを、どのような価値判断で行うか、このような風味特性は何点のスコアを付けるのか」ということを、皆ですり合わせていきます。
各々でカッピングを行い点数をつけたら、付けた点数ごとに手をあげて特徴的なフレーバーについてディスカッションをします。どういった酸の特徴を持っているか・・・甘味は濃厚な甘さか、丸みのある甘さか・・・など。やはりアメリカ人は積極的でしたね。自分からどんどん発言していく文化が薄い日本生まれの私にとっては、圧倒された記憶が残っています。
―2日目、3日目について教えてください。
2日目、3日目はいよいよ本番という感じで。現地のサポートスタッフの方が用意してくれたカップがテーブルに並べられ、カッピングを行っていきます。その当時は1日で50サンプル。2日間で100サンプルのコーヒーをチェックしましたね。
―100サンプルともなると、とても大変そうですね!会場はどのような様子でしたか?
カッピングする数も、国際審査員の人数も多かったので10テーブルくらいに分けて、1回(1セッション)あたり7〜8サンプルをカッピングします。カッピングが終わったらみんなでディスカッション。それが終わったらまたカッピング→ディスカッション・・・という感じで軽いお昼休憩も挟みながら1日がかりでやりました。
審査の時には一日中、会場に「缶詰め状態」になるので、各々が独自のルーティーンを持ってリフレッシュをしながらやっていましたね。
音楽を聞きながらやっている人もいたり、最初の印象を見てバーーとコメントを書く人もいたり、ノイズキャンセラーのヘッドフォンを付けて、集中してただひたすらにカッピングに没頭している人もいたり・・・そういえば、現地エルサルバドルのカッパーの人でやんちゃで面白い人がいて。カッピング最中にムーンウォークをしていて(笑)パフォーマンスのサービス精神がすごかったなあ・・・
―平湯社長もルーティンがあったのですか?
自分はまず、テーブルにセットされているドライの粉の状態で香りをかいて、お湯を注いで冷めるまでの待っている時間にリフレッシュをかねて外に散歩しに行って、またカッピングに戻るというルーティンにしていました。熱い状態、冷めた状態で味わいの印象の違いをみたりと、一日中カッピングをやっていても苦にはならなかったですね。
―カッピング中は自由な感じなんですか?
世界各国からコーヒーのカッピングスキルを持っている人が集まるので、基本はしっかりしながらもカッピング自体は、割とフリーな感じだったかな。自分のカップだけを見る人もいれば、他の人のカップもチェックする人もいたりと、本当に人それぞれです。
―ちなみにコミュニケーション面では困らなかったですか?
審査会の中は英語がスタンダードでしたが、エルサルバドルはスペイン語が公用語なので、現地のサポートスタッフはスペイン語という感じでした。みんな英語を話すことができて、なおかつ「コーヒー」という共通項があったことも関係し、特に困ることはなかったですね。
―国際審査員として参加し、どのようなことを感じましたか?
オブザーバーの時には感じなかった審査に対する使命を強く感じました。「自分の付けたスコアで、このコーヒーは評価される」「農園主の今後にも関わる」という責任感がありました。ほんのちょっとした誤差で、COEの入賞を逃す可能性もあるし、常に油断はできません。生産者の方が丹精に作ってもらったコーヒーを、公正に評価しなければいけないという気持ちで1カップ、1カップ真剣に向き合いカッピングしましたね。
―COE国際審査員の経験を通して、今の仕事に通じることなどはありますか?
色々な国の人が集まってジャッジをしていくので、コーヒーの評価に対しての表現の仕方、味覚の幅は広がった気がします。
最後に表彰式をやるのですが、やっぱり上位になればなるほど会場のボルテージは上がり、一位が発表されるとそれはもう会場中が拍手喝采で、生産者の方もとても嬉しそうでした。
それとともに、自分たちが選んだコーヒーという実感も共に湧いてきて、生産者の方達との絆をもっと強く持ちたいとも思いました。丹念に作ったコーヒーを大切に扱いたいと感じ、今現在もそのことはずっと心の中にあります。
―平湯社長ありがとうございました。インタビューはこれで以上です。
コーヒーの国際品評会として最も有名なCOE。「選び抜かれた最高のコーヒーのみが、この称号を与えられる」とだけ、覚えておいても損はありません。受賞したコーヒーには独自のマークが付いているので、見かけた際はお試しください。