コーヒーのプロフェッショナル
ブラジル生産者
エレサンドラ・べローニ氏
2025年5月16日、大和屋 高崎本店にエレサンドラ・べローニ氏をお招きしてお話を伺いました。
べローニ氏は第22回「Cup of Progressive Cerrado 2024」ウォッシュド部門で優勝した農園主で、今回はるばるブラジルより来日。
当日はお客さま向けの試飲会も同時開催し、多くの方にご来店いただきました。
はじめに

べローニ氏
皆さんこんにちは。エレサンドラと申します。今回このような機会を設けていただき、本当にありがとうございます。また、私の農園に足を運んでくれた大和屋の平湯社長にも本当に感謝しています。
私とコーヒーとの出会いは、1984年に父がコーヒー農園で働くようになったことがきっかけでした。私自身は動物に関する大学に進学しましたが、2003年に農業技師に転向して家業に入りました。そして現在は、夫のフェルナンドと一緒に、ブラジル・ホリゾンティーナ農園を経営しています。
今回は、そんな私の農園やコーヒーの栽培方法についてお話しできればと思います。
プロフィール
エレサンドラ・べローニ氏
ブラジル ホリゾンティーナ農園 農園主
第22回「Cup of Progressive Cerrado 2024」ウォッシュド部門優勝。2021年ヨーロッパの再生農業認証「Regenerative Certified」をコーヒー部門で初めて取得。環境配慮と品質向上を両立させた革新的な栽培法で注目を集める。
〜Cup of Progressive Cerrado 2024について〜 ブラジル・セラード地域で開催される品質コンテスト。同地域のコーヒー生産者が参加し、優れた品質のコーヒーを競い合う。ウォッシュド部門(水洗い)とナチュラル部門(天日乾燥)があり、厳格な審査により最優秀作品が選出される。
森の微生物を活用した栽培法で認証を取得
●未来につながる農業のために
私がコーヒー栽培に従事し始めた頃、ブラジルのコーヒー収穫量は増加し続けていました。しかし、同時に使用される農薬の量も増えていったのです。
このままでは土地がみるみる痩せ、子どもたちの世代になる頃には農業自体が難しくなるのではないか、そう考えるようになり、新たな栽培法を模索するようになりました。 そんな中、2013年に出会ったのが富田先生です。先生は日系二世で日本に留学した際「ぼかし」という生物肥料(微生物肥料)を開発した先生たちと一緒に学ばれました。森の微生物を培養したものが「ぼかし」なのですが、その技術をブラジルに持ち帰られた方です。
●微生物を活かす、微生物に生かされる
森の環境では農薬や肥料を与えなくともアマゾンのような豊かな環境が育まれていますよね。それは、作物があるからだけではなく、さまざまな微生物がいるおかげです。
例えば、さび病は菌なのですが、さび病を攻撃する微生物がいれば病気の広がりを食い止めることができます。
少し脱線するのですが、ここで農薬を使うと、さび病を攻撃するはずの微生物が減り、さび病が増え、また農薬を使うという負のスパイラルになってしまうこともあります。
ここから分かるように微生物には環境をコントロールする力があります。そこで富田先生が考えたのが、「コーヒー栽培でも森の環境を再現すれば微生物の力で(農薬を使わず)病気を減らせるのではないか?」ということです。
●私たちの取り組み
具体的には、1,000ℓ以上の水をタンクに入れ、森の微生物がついた土を20リットルと米ぬかや、麦ぬか、骨粉や魚粉、糖蜜などを加えて空気を入れながら発酵させます。すると微生物たちがどんどん増えていきます。
ここで大切なのが、匂いです。
きちんと発酵できているときは「おいしい」香りがするんですよ。
3日で20ℓから800ℓに増えたこの液を、農園で出た豆やジャガイモの廃物にかけることで良質な有機肥料を作ることができます。この有機肥料を1ヘクタールあたり10t使用することで、化学肥料を一般的な水準の3分の1程度まで削減することができました。
この取り組みは対外的にも評価され、2021年にヨーロッパのRegenerative Certifiedという再生農業認証を、コーヒー部門で初めて取得しています。
コーヒー豆の品質向上への取り組み
●農産物の質を上げるさまざまなアプローチ
農業技師である私の最大の使命は、農園全体のクオリティを上げていくことです。そこで私が取り組んだのが、農園を区分けして品種別にコーヒーを管理し、区画ごとに豆の収穫を行う手法でした。
収穫時期の2〜3週間前に各区画から豆を収穫し、ナチュラル(天日乾燥)とウォッシュド(水洗い)の両方の精製プロセスを試します。
ウォッシュドのほうが味や風味に優れていればウォッシュドを、ナチュラルが良ければナチュラルを選択し、それぞれに最適な収穫時期を決めます。
また、収穫の際は完全に赤くなったチェリーだけを丁寧に収穫していきます。
●自然と人とがつくりだす可能性を信じて
このアプローチに切り替えてから、コーヒーの味や風味が格段に洗練されたと感じています。
ただ、今回のコンテストで優勝できたのはこの収穫方法を採用したことだけでなく、生物肥料などすべての工程を厳密に管理した結果だと思っています。
気候変動への対応など現在も課題は尽きませんが、今後も環境に配慮した持続可能なコーヒー生産を続けていく決意です。
今回優勝したコーヒー豆も心を込めて作ったものですので、ぜひ皆さんに楽しんでいただきたいと思います!
おわりに
生産者の方を直接お招きし、お話を伺うことができたのは、非常に貴重な機会でした。
持続可能な農業と高品質なコーヒー生産の両立を実現しているべローニ氏の取り組みに、私たち大和屋も引き続き注目してまいります。そして、「大和屋だからこそできること」は何かを、これからも考え続けてまいります。








