プロフェッショナル対談
コスタリカ カンデリージャ農園
国を超えた絆
今回は大和屋と約20年にわたりコーヒーへの情熱を共に親交を深めてきた「カンディージャ農園」の3名を、群馬県庁32階の「YAMATOYA COFFEE 32」にお迎えしました。
大和屋とカンデリージャ農園との出会いや歴史、コスタリカや農園のコーヒーについて、大和屋代表取締役の平湯聡(ヒラユ サトシ 以下:平湯社長)が対談を通し魅力をお伝えします。
プロフィール
リカルド・エルナンデス氏
「カンデリージャ農園」の創業者の一人。
当初、コーヒー豆の栽培のみを行っていたが、収穫〜出荷までのすべてのプロセスを自分たちで行えるよう家族と共に一念発起。
創業から約2年で事業を軌道に乗せた情熱と手腕を持ち、40年にわたりコーヒー栽培に携わり続けている。
家族や友人を大切にする心温かな経営者。
リカルド・ホセ・エルナンデス氏
リカルド・エルナンデス氏の息子。
15歳の頃から農園の手伝いを行い、父と共に本格的な農園経営に携わるようになり10年を超えた。現在は世代交代をし、カンデリージャ農園の主幹として切り盛りをしている若社長。
伝統を大切にしながらも、マーケットを意識した新たな味づくりなど果敢に挑戦を重ねる若き経営者。
ディデェル・サンチェス氏
リカルド・エルナンデス氏の兄弟で、リカルド・ホセ・エルナンデス氏の叔父。
家族が集まり経営する「カンデリージャ農園」創業者の一人。40年以上、コーヒー栽培に携わる。
コーヒーづくりで特に好きな時間は畑(農園)で自分の手でコーヒーを収穫している時間。
プロローグ
出会いと歴史
-まず、大和屋とカンデリージャ農園の出会いや歴史について教えてください。
リカルド(父)氏:
今から約20年前、2006年ごろ“友だち”が訪ねてきた、それが大和屋さんでした!
当時は聡社長のお父様、平湯正信さんが社長さんだった頃だね。
あの頃はまだアジアからの来客は少なくて、大和屋さんたちは私たちが迎えた初めての『日本』のお客さんだったよ。
平湯社長:
私も父と一緒に伺ったのを覚えています。自然豊かな農園、温かい家族。そしてカンデリージャ農園さんに行ってみて感じた印象は「本当にきれい」でした。今もそうですが、多くの人が働いて、さまざまなプロセスがある中で、管理が行き届いていることにいつも感動します。
ディデェル氏:
ありがとうございます、嬉しいです。
そこから大和屋さんと私たちの絆が始まったんですよね。約20年、国を超えて私たちが育てたコーヒーを日本の方々に届けていただけること、すごく嬉しく思います。
コスタリカのコーヒーについて
-コスタリカのコーヒーについて環境や味の特徴を教えてください。
リカルド(息子)氏:
コーヒー産業はコスタリカの主要産業の一つで、多くのコミュニティや活動を支えています。農業が盛んな国で、コーヒー農園もたくさんあります。
その中でも、私たちが一番な自負がありますよ!
コスタリカの味の特徴としては・・・オイシイ!笑
うーん、そうですね、平湯さんはたくさんのコーヒーを扱っていると思いますが、コスタリカの味や私の農園のコーヒーについてどう思いますか?
平湯社長:
そうですね、カンデリージャ農園さんはコスタリカの中でもタラス(Tarrazú)という生産地域にありますよね。
タラス地域のコーヒーの印象は豆が引き締まっていて、香りや酸味が印象的でしょうか。
これはタラス地域が、標高が高く昼夜の寒暖差があるためゆっくり成熟するからですよね。コーヒーの栽培に恵まれた地形だなと思います。
それに、コスタリカならではの「ハニ―プロセス」と呼ばれる独自製法は魅力の一つです。
ミューレ―ジと呼ばれる粘液質を残したまま乾燥させることで、そこに含まれる糖分が生豆に凝縮されていって独特な甘みを持つ美味しい豆になりますよね。
ディデェル氏:
ハニープロセスは、発酵の管理が難しくなったり、欠点豆が混入しやすくなったり手間がかかります。でも、聡社長が言ってくれたように「コスタリカならでは」の美味しさにつながっていると聞いて、これからも愛情をこめてコーヒーを作ろうと改めて思いました。
平湯社長:
はい!皆さんの愛情はきちんと伝わっています!
例えば皆さんは、一粒一粒手摘みで収穫されていますよね。すごい手間ひまがかかると思うんです。でも、だからこそ完熟の豆が、均一に集められる。それが最終的に珈琲になったときに、特別な香りやクリアな味、スムースな口当たりにつながっているのを感じます。
カンデリージャ農園
-カンデリージャ農園のこだわりや、思い、成り立ちについて教えてください。
平湯社長:
コスタリカのコーヒーはユニークで美味しい。
しかしその中でも「カンデリージャ農園」の豆は味や品質、そして事業体として秀でたものを感じていますが、その秘訣というか、秘密というか、お教えいただけたりしますか。
リカルド(父)氏:
愛情につきるね!愛情!
リカルド(息子)氏:
そうですね、私たちの農園は7つの家族で形成されていて、農園に携わっている2世代だけでも30~35名が働いています。
父が言うように、コーヒーに対する愛情がみんなあって、それぞれのファミリー同士も家族の絆を大切にしていることが、突き詰めて考えると「美味しさの秘訣」かもしれませんね。
と言うのも、今私たちの農園が、自分たちが美味しいと思うコーヒーづくりを追求できるのは、父たちの世代が「ただのコーヒー栽培」から「カンデリージャ農園」の経営に仕事や事業を変換していったからできることなのです。
リカルド(父)氏:
昔はただコーヒーを栽培して豆を農協のようなところに売って生計を立てていました。でももっとコーヒーの事がしたくなった。それで、家族と共に、コーヒーの栽培・収穫から精製、出荷までできるようになろう!と思ったんです。
平湯社長:
凄い、一念発起ですね!大きな変化ですし、新しいこともたくさんあって、大変なことも多かったのではないですか?
リカルド(父)氏:
それは大変だったね。設備投資にはたくさんのお金が必要だったから。だから1年目は半分今まで通り、豆の栽培・収穫でそれを売ったお金で設備資金を調達したりしたよ。
でも、2年目には自分たちで栽培した豆で出荷を行えることができた。どれも家族の結束なしには成し遂げられないことだったよ。
一番大変だったのは、お客さんを見つけることだった。
でも、ほら、大和屋さんに会えたように、良い友情にも巡り合えた!
平湯社長:
ありがとうございます。私たちもご縁に感謝します!
コーヒーへのこだわり、特徴
-カンデリージャ農園のコーヒーへのこだわりや特徴を教えてください
ディデェル氏:
私たちの農園は全員がコーヒーに愛情をもって栽培やさまざまな工程に携わっているよ。聡社長が「きれい、手入れが行き届いている」と言ってくれたのも、そういう気持ちや姿勢の表れだと思う、ありがとう。
リカルド(父)氏:
今は息子に引き継いで、任せていることも多くなってきた。息子も私と同じようにコーヒーを愛しているし、挑戦しているところも誇らしいよ!
リカルド(息子)氏:
父や叔父が一生懸命つくってくれた独自の農園だからこそできることがたくさんあるんだ。
栽培だけじゃなく後の工程も自分たちで行うことで、高品質(グレード)の豆づくりを目指すことができる。それだけじゃなく、プロセスによって変わる多種多様な味づくりができるんだ!
だから、伝統的な味をつくりながら、一方で世界のマーケットを意識した新しい味づくりもやっている。そうだな、新しい味っていうのは今表現するなら「エキゾチックな味」かな。
平湯社長:
伝統と、新しいことへの挑戦。私もリカルドさんたちのように、創業者の父から継承した良い伝統を紡いでいくことと、新しいことへ挑戦することの両方を大事にしたいと思っているのでとても共感できます。
私が感じるカンデリージャ農園のコーヒーの美味しさは、その特別な酸味と甘み。特に甘みは力強いのに質の良さが感じられ、全体としては「きれい」な印象。
バランスがよく、スムースな飲み心地。これは本当に皆さんの愛情と手間ひまがつくる美味しさなんだと思います。それから、カンデリージャ農園さんの「安定性」も私はすごいなと思っています。
珈琲専門店としては、お客様に毎年美味しい珈琲を飲んでいただきたい。でも珈琲は野菜や果物と同じように農作物、環境や天候などに収穫量や味も左右されてしまう。
そんな中で、カンデリージャ農園さんが、質も量も毎年安定してコーヒーを届けてくれることにも皆さんの姿勢や努力を感じてありがたく思っています。
リカルド(父)氏:
アミーゴ!!
-今後の展望を教えてください!
リカルド(息子)氏:
これからも大和屋さんを通して日本の皆さんに「最高の品質」のコーヒーを届け続けることです。日本は“友だち”。
美しくて誠実な国、コーヒーが好きな日本に、私たちは絆を感じています。日本の友人たちのために、良いコーヒーを作り続けるので、ぜひ楽しんでください。