プロフェッショナル対談
ホンジュラスコーヒー
「ロニー・ガメス氏」「オスカル・ゴセリン氏」に聞く、ホンジュラスコーヒーの魅力
今回は、日本から1,200キロ離れた中米の国「ホンジュラス」から2名のスペシャルゲストをお迎えしての対談です。
キラキラな瞳と朗らかな笑顔のお二人を迎えるのは、大和屋代表取締役の平湯聡(ヒラユ サトシ 以下:平湯社長)と、コーディネーター兼通訳の生豆専門商社ワタル株式会社の松元啓太(マツモト ケイタ)氏。
平湯社長の旅のご縁により対談の機会が実現し、 ホンジュラスのコーヒー業界を代表するロニー・ガメス氏、オスカル・ゴセリン氏にお話しを伺いました!いま、スペシャルティコーヒーで注目を集める「ホンジュラス」のコーヒー事情や産地の魅力などをお伝えします。

プロフィール

ロニー・ガメス氏
ホンジュラスのコーヒー業界を代表する存在。生産者であり国際的なカッパー(コーヒーの評価や品質保持に欠かせないカッピングのプロフェッショナル)。国際的な品評会「カップ・オブ・エクセレンス」のヘッドジャッジも務める。
高品質なホンジュラスのコーヒーを世界に広めるため消費国へのPR活動だけでなく、コーヒー生産者の支援や、次世代のコーヒー産業を担う人材育成のためのコーヒースクールも設立するなど、多岐に活動されている。

オスカル・ゴセリン氏
ホンジュラスの一大コーヒー産地・レンペラ県サンセバスチャン地区のコーヒー生産者をとりまとめる大黒柱。自身でもLos Planes農園を運営している。
プロローグ
群馬にお二人をお迎えして
―まず始めに平湯社長に質問です。中央アメリカの「ホンジュラス」から今日お二人をお招きする事になった経緯を教えてください。
平湯社長:
一言でいうならば、「幸運な出会いと縁、そしてお二人の心意気」に他なりません。
2023年8月に私がホンジュラスを訪問した際に、お二人と出会ったのがはじまりです。ホンジュラスでの視察はロニーさんに案内いただきました。ロニーさんと共に、四駆の車で行くような山道を5時間以上かけて目的地でもあるコーヒー生産地に辿り着きました。そこで出迎えてくれたのがオスカルさんでした。
ロニーさんのコーヒーに込める熱い情熱に深く共感しましたし、オスカルさんのコーヒーを丁寧に育てるひたむきな姿勢に心打たれました。ホンジュラス滞在中、お二人には大変お世話になったので、来日される際には、群馬の方にお招きできればと思っていました。
そして、ちょうど今回お二人が2023年9月27日から東京で開催された、アジア最大のコーヒーの祭典SCAJ2023のため来日されるということで、是非に!とお招きした経緯です。
ロニーさん、オスカルさんのお二人も、ホンジュラスのコーヒー豆が日本でどのようにしてお客様のお手元に届くか見てみたいという希望もありました。

―ロニーさん、オスカルさん、今回日本を訪れた印象はいかがですか?

オスカル氏:
生産者である私が、海を越えて実際にバイヤーやその先の消費者に会えたことは、とても貴重な経験です。そして大和屋の従業員の方を始め、出会う人々の献身さに心打たれました。また、日本は豊かな国ですね。私の国は政府や治安の問題があるので、このような美しい環境を見られたことも良い経験になりました。
ロニー氏:
まず、日本の消費者の方はコーヒーに対して目が肥えているなと感じます。コーヒー自体の品質もそうですし、コーヒーを安定的に供給できる整った環境が日本にはある印象です。
それと、【生産者×輸出入業者×バイヤー・販売元】がつながっていて、一緒に「良い品質のコーヒーを扱っていこう」という、同じゴールを持って取り組んでいるのが素晴らしいことだと思います。これは私がずっと大切にしていることでもありますが、いつも感動しています。
私は2010年に初めて日本を訪れて以来、今回で11回目の来日になりました。いつもこの繋がりを感じ、大切に思う機会になっています。今回、大和屋の店舗で一般のお客様にホンジュラスのコーヒーを飲んでいただけて嬉しかったですし、コーヒーを扱う大和屋のスタッフの皆さんに講座ができたことも大変意義深かったです。
ホンジュラスのコーヒーについて

―ホンジュラスのコーヒーの現状について、課題などもあればお教えください
ロニー氏:
ホンジュラスは小さな国で、日本の方にはまだなじみが少なく、プロモーションが不十分ということが課題でしょうか。しかし、コーヒーの品質においては大きなポテンシャルのある国です。ホンジュラスのコーヒーをもっともっと紹介できれば、よりたくさんのコーヒー好きの方に喜んでいただけると確信しています。
―ズバリ!そんなホンジュラスのコーヒーの魅力を教えてください
ロニー氏:
ホンジュラスのコーヒー農園の特徴は「小規模農園」が多いということです。一杯のコーヒーの奥に、農園を営む一人ひとりの顔が見える、品質が全てその農園の手に委ねられ、責任のある仕事がなされているということです。
例えば大規模農園では広大な面積を管理するために、人を雇い、縦割りでの管理等が必要になります。そうなると品質管理の難しさが想像できるかと思います。
一方、小規模農園のほとんどが「家族」による生産です。これは「品質の高いコーヒーをつくり売らないと家族が困る」ということに直結しています。そう、真剣勝負なんです。最初にお見せした、農園での集合写真、みんな笑顔ですよね。家族で丹精込めて良いコーヒーができること、それが評価されることが、農園と家族の幸せや誇りに直結するのです。 だからこそ、私はホンジュラスのコーヒー品質を保ち高めることを自分のミッションだと思っています。

生産者の方との関わり
―ロニー氏はどのような形で生産者と関わられていますか?平湯社長がホンジュラスを訪れた際に、ロニー氏による「画期的で感動的な学校」を見たと聞いたのですが。
ロニー氏:
私は長くホンジュラスのコーヒー品質を上げるため、生産者の技術支援に携わってきました。具体的には、良い生産者を発掘してスペシャルティコーヒーをつくる啓蒙活動です。品質を高めていくための技術指導や、「消費者がどういったコーヒーを求めているのか?」マーケットについての知識などをレクチャーします。あとは、「ゲイシャ」という品種を生産者へ提供して栽培することを勧めたりもしました。
関わった農家は大きな、それも良い変化が起こります。それは、今まで市場に委ねられていた価値基準によって、「コマーシャルコーヒー」として安価な値段で取引されるしかなかったものが、「スペシャリティコーヒー」として、その品質や美味しさに見合った、高い評価で取引されることです。高品質なコーヒーをつくる農園や、その家族の努力が正しく評価される機会になります。
この状態を永く持続させるために、そしてさらに発展させるために「Raga Coffee」を設立しコーヒーを学ぶことのできる2つの学校を運営しています。学校では、カッピング、焙煎、コーヒーのさまざまなプロセスについて教えています。
現在、開校して2ヶ月になりますが、18~24歳くらいまでの若者が25人学んでいて、生徒の中には山間の農園から4時間以上かけて来る女の子もいます。
私はこの取組みが、コーヒー農園の未来をより明るくすると信じています。

出典:https://www.instagram.com/ragacoffee/

出典:https://www.instagram.com/ragacoffee/
今後の展望・思い

―今後のホンジュラスコーヒーの展望を教えてください
ロニー氏:
少しずつかもしれませんが、生産者たちが手塩にかけたホンジュラスのコーヒーは、着実に世界を魅了していくでしょう。そして、未来に願うのは、若い世代に引き継がれていく農園が、より発展していくことです。
そのためにも、若い世代の教育に励んで行きますし、これからも【生産者×輸出入業者×バイヤー・販売元】がつながり、同じゴールを持って取り組む輪を大切にしていきたいと思っています。 ぜひ、丹精込めて作られるホンジュラスの美味しいコーヒーを、大和屋さんで飲んでみてください!!
―大和屋さんとしての思いもお聞かせください
平湯社長:
私も現地に行って感動したホンジュラスのコーヒー。日本ではまだあまり知られていないかもしれませんが、その品質の高さやそれを支える生産者の思いは本物です。世界にはまだこんなに素晴らしいコーヒーや産地がある。コーヒーを生業にする当社だからこそ、これからもこの出会いを大切にしながら、ホンジュラスのコーヒーの美味しさ、産地の思いを伝えていければと思います。 産地からのバトンをつなぎ、弊社も丹精込めて焙煎しています。ぜひ、ホンジュラスのコーヒー、一度ご賞味ください!!