コーヒー豆:産地編
「コスタリカ」

コスタリカは、国土面積わずか51,000平方キロメートルと四国と九州を合わせたほどの小さな国ですが、コーヒーの生産が主要産業のひとつでもあり、国全体でコーヒーの品質の向上に取組んでいます。

その生産技術の進歩は著しく、世界のスペシャルティコーヒーを牽引する一国としても注目されています。

今回のdeepressoでは、中央アメリカに位置する「コスタリカ」についてご紹介します。

目次

コスタリカについて
コーヒーの生産
コーヒーの味わいの特徴
コーヒーの歴史
コーヒーの格付け
コスタリカ現地視察レポート

コスタリカについて

「コスタリカ(Costa Rica)」の国名は、スペイン語で「豊かな(Rica)海岸(Costa)」を意味します。これは、スペイン人がこの地に上陸した時に遭遇した先住民たちが、金細工のきらびやかな装飾品を身につけていたことが由来とされています。

北東はカリブ海、西南は太平洋に面しており、国土の中に2,000mを越える山々もあれば、現在活動する活火山もあります。さらに熱帯雨林もあるなど、多種多様な環境が存在しています。「地球上の約0.03%の面積に、地球上の約5%の生物が棲息している」という、まさに生き物の楽園とも言われる国です。

その自然豊かな環境により、コスタリカは近年話題のエコツーリズム発祥の国として、欧米諸国では観光大国として大きく知られています。

エコツーリズムとは「自然環境の保全を意識しながら観光すること」を意味する造語で、観光を通じて「自然の美しさ・大切さ」を学ぶことができます。また同時に、入場料などを財源に自然保護活動に充てるといった、自然保護と観光を両立した考えでもあります。

コーヒーの生産

国家レベルでコーヒーの品質管理に取組んでいます。

栽培する品種はアラビカ種に絞り、カネフォラ種などの栽培は行っていません。栽培できる地域も狭い為、低価格なコーヒーを大量生産するのではなく、ハイグレードなコーヒーを少量生産しています。少量生産だからこそ、一つ一つに手間暇をかけ丁寧な生産ができ、良質なコーヒー生産へと繋がっています。

コスタリカでは、コーヒー生産に携わる農家が80,000軒ほどありながらも、ほとんどが小規模農家です。そのため「マイクロミル」や「協同組合」が発達し、【農園単位】で取引されることは少なく【マイクロミル単位】で取引されることが通例となっています。

「マイクロミル:Micro Mill」とは、コーヒー栽培エリアに点在し、その地域で収穫されたコーヒーチェリーを加工(精製)する、いわば「小型の工場」のようなところです。各農家で収穫したコーヒーチェリーを、キロ単位で買い集めて精選工程を行います。

コーヒー麻袋が積まれる、マイクロミル内

マイクロミルが普及した背景には、「高地での少量生産」「(中米のなかでも)人件費が高い」など…農園経営が厳しい現状がありました。マイクロミル単位でコーヒーの取引を行うことで、ハイグレードなコーヒーを適切な値段で取引することが可能となりました。

また、マイクロミルの普及は「ハニー製法」など新しい精選方法が生まれるきっかけになっています。大型のミルでは出来ないような精選方法も、小型である利点を生かすことで可能にし、今までにない印象的なコーヒーを生み出すことに成功しています。

コーヒーの味わいの特徴

一概には言えませんがコスタリカのコーヒーは、甘味・苦味・酸味の中でも甘味が印象的で、バランスの良い甘味が感じられます。

酸味も特徴的で、「豊かな酸味が感じられる」と評価されることが多いです。柑橘系のようなスッキリとした印象だけではなく、甘さに支えられ、りんごのような果実系の印象も感じられます。

コーヒーの歴史

19世紀初頭ごろにコーヒーノキが持ち込まれ、中央アメリカで最も早くコーヒー栽培が開始されました。その後、コスタリカを通してグアテマラ、エルサルバドルへとコーヒーの生産技術が伝播したそうです。

19世紀後半にはコーヒー農地が拡大され、コーヒーを基盤に経済が発展し、コーヒーの輸出量が全体の80%と、コーヒー産業が一大産業となっていた時期がありました。コスタリカの土地所有形態は、自営農民による中小規模の土地所有が主体であったため、他の中米諸国やブラジルのような大規模プランテーションは発達しませんでした。

1950年以降は政治の安定とあいまって経済成長が続き、この時期からコスタリの経済は伝統的なバナナ、コーヒーの輸出に加えて、外資による工業化が進んでいくことになります。

かつて植民地時代には農業に大きく依存し世界でも最も貧しい地域の一つでしたが、農業国から工業国となって、「中米の優等生」と呼ばれるようになりました。現在では、金融、外資系企業向けサービス、製薬、エコツーリズムなど多角的な経済活動が行われ、中央アメリカの中では、パナマに次ぐ先進国となっています。主な輸出品は、コーヒーをはじめ、サトウキビ、バナナ、パイナップル、そして、コンピュータ部品を含めた精密機械です。

コーヒーの格付け

コーヒーは生産国ごとに等級(グレード)と言われる格付けが行われています。大きく分けて「栽培地の標高」「スクリーンサイズ(豆の大きさ)」「欠点数」の3つが採用されており、コスタリカでは「栽培地の標高」による格付け方法が取り入れられています。この格付け方法は中央アメリカの生産国に多くみられる格付け方法です。

おおよその指標グレード
1,200〜1,700mSHB(ストリクトリー・ハード・ビーン)
800〜1,200mH B(ハード・ビーン)
コスタリカの格付け指標

コスタリカ現地視察レポート

2015年コスタリカで行われた、スペシャルティコーヒーの国際品評会「Cup Of Excellence:カップ・オブ・エクセレンス(以下:COE)」のオブザーバーとして、大和屋・焙煎工場の高橋工場長が約1週間コスタリカに行きました。C O Eの空き時間に、ファームツアープログラムとして、マイクロミルや農園に行った際の現地の様子についてお伺いしました。

高橋工場長

コスタリカは自然エネルギーが発達しており、都市部はとても近代的でした。小さな国の中に多くの山々があるため、勾配が激しく都市部のすぐ近くに、コーヒー農園がありました。

●マイクロミル:Beneficico La Eva

Beneficico La Eva ウエット・ドライミル
視察風景

ウエストバレー地区にあるBeneficico La Eva ウエット・ドライミルに行きました。

中規模のマイクロミルとのことでしたが、実際に行ってみると大規模ではないかと思うほどの大きさでした。場内には水選処理工程、大型ドライヤー他、電子選別機や振動機等、多くの機械やサイロがあり、この時はコスタリカのコーヒーだけでなく、グアテマラやニカラグアのコーヒーも取り扱っていました。

●農園:エルバス農園

エルバス農園の風景

現在大和屋で販売しているアントニオ・バランテス氏の所有するエルバス農園。

エルバス農園は、ウエストバレー地区の標高1,500〜1,600m付近にあります。マイクロバスで向かい、途中までは勾配もそんなにキツくなかったのですが、農園付近に近づいていくと急激に勾配が上がるようなところでした。実際農園に足を踏み入れてみると、かなり急勾配の斜面に植え付けてあり、作業をするには大変な労力と感じずにはいられません。

この他にも、タラス地区にあるカンデリージャ農園やセントバレー地区にあるブルマス農園など…いくつかの農園視察をしました。私が行った当時は貧富の差もまだまだあり、都市部を離れると事件事故が日常的に起きていたりと治安が悪い面もありましたが、総じてとてもいい国だったと記憶しています。

最後に・・・

コスタリカは日本人にはあまりなじみのない国ではありますが、 “世界で一番美しい鳥「ケツァール(: Quetzal)」”が生息しており、手塚治虫の漫画『火の鳥』のモデルにもなったと言われています。コーヒーを飲みながら生産国に思いを馳せるのもまた、コーヒーの楽しみ方の一つですね。

現在大和屋では、コスタリカ エルバス・マイクロミルのコーヒーを販売しています。今春収穫した、春摘みコーヒーを空輸直行便にて入荷しました。グリーンアップルのようなジューシーな甘み、クリーンでまろやかな口当たり…そして春摘みならではのフレッシュでみずみずしい味わいをお楽しみください。

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