プロフェッショナル対談
ワインとコーヒーの話

シニアソムリエ 仲澤 賢一氏
「ワイン×コーヒー」対談

ワインとコーヒーは、実は共通点の多い存在と言われています。ワインもコーヒーも知れば知るほど奥深い世界。今回は群馬を代表するソムリエの一人「仲沢酒店 代表取締役 仲澤賢一さん(以下: 仲澤さん)」に、お話をお伺いしました。
「ワイン×コーヒー」について、大和屋所属のコーヒーマイスター櫻井峻が行ったインタビューを対談形式でお届けします。

<Profile>
有限会社仲沢酒店 代表取締役
仲澤 賢一(ナカザワ ケンイチ)
(社)日本ソムリエ協会認定 シニアソムリエ
(社)日本ソムリエ協会 群馬支部 支部長

有限会社仲沢酒店 代表取締役 仲澤 賢一

<Interviewer>
株式会社大和屋
櫻井 峻(サクライ シュン)
SCAJ認定 コーヒーマイスター

ワイン×コーヒー

―本日はお忙しいところお時間をいただき、ありがとうございます。
ワインとコーヒーはともに嗜好品ということや、原料が果実であること。たくさんの工程を経て一杯の飲み物になるなど、共通点も多くあると感じています。ちなみに 仲澤さんは普段、コーヒーを飲みますか?

こちらこそよろしくお願いいたします。コーヒーは嗜む程度で、振り返るとワインのようにコーヒーを味わって飲むということはあまりなかったのですが、今日の企画を楽しみにしていました。

―ありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。
因みにコーヒー業界では「カッピング」という、いわゆるテイスティングのようなことを行います。豆の特徴や品質などを「カッピング」によって感じ取っていくわけですが、その時に用いる、フレーバーの表現にワインとコーヒーとのつながりを感じています。

たしかに。そうかもしれませんね!ワインをどう評価するか、業界の人同士でわかりやすい指標となるような用語が、たくさん使われています。

赤ワインの香りを表現する中には「カカオ」「コーヒー」といったコーヒー系のものもあります。ロースト感、焦げた感じの味わいを表現するときに使います。一般的にだれでもイメージしやすい味だからですかね。

マニュアルのようなものもありますが、ワインに馴染みがない方にとっては「え、本当にそんな香りがするの?」と感じるようなやりとりだと思います。

―コーヒーも、味の表現をした後「本当にそんな香りがするの?」と聞かれることがあります。感覚を掴むまでが大変ですよね。ワインのテイスティングは、どういう順序で行うのですか?

赤ワインの場合は、まず外観を見ます。淡いのか、濃いのか。フレッシュなものだと紫で赤みが強かったり、熟成されていると茶褐色のようになってきたり。同時に、熟度や粘度も確認します。

次に、香りをとらえるために果実の香りを探します。ワインは葡萄からできているので、果実の香りで表します。ブルーベリー、ブラックベリーのような香りはあるか。それが熟しているものなのか、フレッシュなものなのか。発酵からくるバニラっぽい香り、熟成からくる秋の森の中のような枯葉や、腐葉土的な香り、動物的な香り…というように探っていきます。

いきなり味の話をするのではなく、外観、香りをみて、その後口に入れ、味の話をしていきます。ソムリエとして重視するのは、甘み・酸味・苦味などほとんどが香りの要素です。

こうしたことを通して、状態や価値を見極めます。

―秋の森という表現も特徴的ですね。コーヒーでも「アーシー(土っぽい)」という表現を用いることがよくあるので、親近感がわきます。

コーヒーのテイスティング

―ワインの評価のお話を聞いたところで!コーヒーを何種類か淹れるので、ソムリエ目線で感想を頂けますでしょうか。

コーヒーの飲み比べは行ったことがないので、違いがわかるか不安ですが、せっかくの機会なのでやってみましょう!

―ありがとうございます。今回は大和屋のコーヒーから3つの生産国、4種類のコーヒーをご用意しました。「コロンビア」「マンデリン」「ブラジル」そして、同じブラジルでも少し違った味わいの「ブラジル ストロベリー」という今季限定のコーヒーです。

カップでテイスティングするのは初めてです。ワインと同様にワイングラスに移してみてもいいですか?

―ワイングラスでコーヒーのテイスティングを見るのは初めてです。是非是非、お願いします。

まずは外観を見るためワイングラスを傾けて、その後液体を少しまわします。その後は、匂いですね。鼻をグッと近づけて嗅ぎます。

―ソムリエの方がやっているのをテレビで見たことがあります。実際にやりながら、解説していただくとわかりやすいですね!

見た目は30年くらい熟成したワインのような感じですね。オレンジがかった茶色というか、枯れた色調を言いますか。

ワインも熟成が進むと、コーヒーのような褐色になることもあるんですね。コーヒーだと液体としての色の評価は特にないので、新鮮です。味はどうですか?

それぞれ口に入れた時の広がり方と言いますか、酸と苦味のバランスに特徴があるように感じます。
「コロンビア」は、グッと酸がきて、冷涼感のある爽やかな酸を感じます。
「マンデリン」は、少し柔らかく、酸よりも甘みを感じます。
「ブラジル」は、そこまで酸を感じず、苦味の印象が残りますね。
「ブラジル ストロベリー」は、ベリーぽい酸を感じます。コロンビアで感じた酸とも少し違うイメージで、おもしろい酸です!

―それぞれの酸の違い、特徴を正確に捉えていて、さすがです!

ありがとうございます。よかったです。ちなみに、コーヒーはテイスティングするときの温度は決まっていますか?

温度は、コーヒーの場合70〜80度の高温帯と言われる温度からテイスティングを始め、徐々に冷めてきた中温帯、さらに低温帯と言われる冷めた状態で味を見ます。冷めてくると甘みが出てきます。ワインは何度ぐらいで行なっていますか?

赤ワインだと16度くらい。白ワインだと10度で注いで、12度くらいで再度テイスティングします。30分おくと温度が上がって全然違う香りができます。温度によって印象は変わるので、ソムリエならではの味わい方だと思います。

―コーヒーは温度が下がっていく状態で、ワインは上がっていく状態でテイスティング。面白いですね。

そうそう、酸の話で思い出したのですが、最近冷涼地のワインが注目されています。

冷涼地のワイン

―冷涼地のワインとはなんですか?

冷涼地のワインに分類される
オーストリア TEGERNSEERHOF
(テーゲルンゼアホーフ)

冷涼地と言われる、寒流の流れる海の側や、標高の高いところなどで育てられた葡萄は、通常の葡萄よりも酸が残ると言われています。これが赤ワインの原料となり、さっぱりとした味わいを生み出します。

一般的には、重いものを食べる時は重い赤という組み合わせが王道ですが、健康面や地球環境への配慮から、世界的に肉などの重いものを食べないような流れが生まれています。赤ワインも影響を受けて、魚にも合うような繊細な味わいのもの、さっぱりした味わいのものの人気が広がっています。

世界的な食の流れに合わせたワインの存在も重要になってきました。

―ワインの嗜好性の変化も、コーヒーのサードウェーブとリンクする部分を感じます。昔はガツンと苦いものが主流でしたが、今はコーヒーが本来持つ「良質な明るい酸味」が一つのポイントだなと感じています。そういったところでも共通点を感じますね。

産地のお話やワインの熟成のお話など…まだまだお伺いしたいことがありますが、続きはまた次の機会にお願いしたいと思います。 仲澤さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

店舗情報

仲沢酒店 本店
群馬県高崎市八千代町1-12-4
営業時間 9:00〜20:00(水曜定休)
TEL 027-323-1621(9:00〜18:00)
HP  https://www.nakasake.com/
Grand Vin Maebashi(グランヴァン前橋)
群馬県前橋市表町2-30-8 1F
営業時間 10:00〜22:00(無休)
TEL 027-212-9797
HP https://www.grandvinmaebashi.com/

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